平成10年3月、阿波連漁港内に1頭の子クジラが迷い込みました。母クジラとはぐれ、漁港に戻る漁船の影を母親と思ったのでしょうか、どうやら、船影を追いかけて、湾の中に入り込んだようです。
島の人たちは、この迷子クジラを母クジラのもとへ返してやろうと、船で先導し、湾の外へ連れ出しました。でも、先導した船が港へ戻ろうとすると、その迷子クジラも一緒に港の方へついてきます。仕方なく、ずっと遠くの沖合いまでクジラを先導し、クジラのすきを見て急いで港へ戻り、ようやく、子クジラを外海に戻すことができたと思いました。
ところが、しばらくすると、また、あの子クジラが、同じように漁港の中に入って来ました。そして今度は、漁港のそばにある阿波連ビーチの浅瀬にはまり、あばれています。みんなは、また船を出し、子クジラを先導して浅瀬から出してやり、前と同じように沖合いまで連れて行って、放してやりました。
それからしばらくしても、子クジラは、港に戻って来ません。今度こそ、うまくいったようだと、島の人たちは安心しました。
しかし、残念なことに、それから数日後、阿波連ビーチの向いに浮かぶハナリ島という小島の砂浜に、その迷子クジラの亡きがらが打ち上げられているのが発見されました。
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